第58回 四国自然史科学研究セミナー
四国自然史科学研究セミナーとは、四国地域の自然史科学の知見ならびに調査研究活動を展開している個人・団体と分野、地域、年代を越えて情報交換することを目的に、定期的に開催しているイベントである。
第58回となる今回は、高知に自然史博物館をつくる会代表の谷地森秀二氏を講師として召喚し、「高知で自然史博物館を語ろう」と題し、高知県になぜ自然史博物館が必要なのか?について講演いただき、その後に参加者とともに高知県に必要な自然史博物館とは?について意見交換を行う。
【開催日時】
令和6年8月23日(金)18時30分~20時
【会場】
高知みらい科学館実験室(〒780-0842高知県高知市追手筋2丁目1-1オーテピア5階)
【参加費】
無料
【対象者および人数】
高知県の生物に興味を持つ人・自然史博物館に興味を持つ人 50人
【参加申込】
事前予約不要
セミナーに参加した聴講者からの声
〇高知県香南市 23歳
【意見】
高知県内の自然史博物館をつくるのに、多くの壁が存在することは非常に難しい問題ですね。高知県のテーマ性として、南四国としておくことはとても興味深いと思います。同時に、四国の文化、自然は東西に分かれることもあると思いますので東と西にそれぞれつくることもおもしろいかと考えました。コスト面が大変でしょうが…。本日のセミナーは非常に勉強になりました。ありがとうございました。
〇愛媛県松山市(高知県須崎市出身) 18歳
【意見】
昨年まで小津高校生物部の標本管理に関わっており、収蔵庫の必要性は私も考えています。多くの人がアクセスしやすいということは、博物館において重要なことであり、東敷地の空地へ設置することは、最善策の一つであるということは谷地森さんからお話を何度も聞いています。私事ですが、私が作製している標本も家に置いているのですが、今回帰省した際に見てみると、大半がカビにやられてしまっています。スペースも環境も良くありません。年齢的にはまだ大丈夫ですが、ぜひどこか収蔵できるところができるのを希望します。
【意見】
膨大な標本を一時的に保管する場所だけでなく、一般の人にも幅広く楽しんでもらえるような博物館。国や市町村の支援も受けながらも、利益を生み出し、人口減少により、支援が減ったとしても運営していける博物館。
〇徳島県那賀郡那賀町 34歳
【質問】
常に収蔵スペースの問題は付きまとうと思うが、必要なデータ(3Ð、CTスキャン?分類群によって適切な計測箇所があると思うが)を最低限、後世に残せる可能性を模索する意味でも、データベースに残す形は検討可能なのか?
【意見】
「南四国」というワーディングは良いと思いました。「知」と「食」をキーワードにしたひろめはくも、自然史科学を学ぶための面白い切り口になると思う。ただし経済効果で戦いぬくのは難しい。学術的価値の高い標本の発掘は、引き続き進めていただきたい(会として、個人として)。
〇愛媛県松山市 22歳
【質問】
収蔵庫を建設した後、常設展としてはどのようなコンセプトで構成を行う予定でしょうか。県外の人間であり、高知の地域的な自然、民俗に詳しい訳ではないのですが、高知はアニミズム的な信仰が盛んな地域であると感じております。そのため、もし展示をつくるのであれば、その地域の人間の自然利用と生態的な特性を合わせたような展示があると、生物に興味のある人だけでなく、一般の人もおとずれやすい展示になるのではないかと思いました。
【意見】
上の件で、常設展示について質問させていただいたのですが、私自身が博物館に訪れる中で、常設展が固定化されていると感じております。そのため、研究に合わせて常設がアップデートされるような展示があればよいと思っております。
〇高知県高知市 27歳
【質問】
博物館の年間の維持費はどれくらいを見込んでおられますでしょうか?あるいはどのくらいの予算が標本管理のために必要になるのでしょうか?また、維持などの財源は何を考えておられますか?
【意見】
このようなセミナーに参加される方は標本保存の必要性についてよく理解していると思います。一方で一般の方はそうでない場合が多いと思うので、一般の方に理解が広がれば、博物館設置の機運が高まってくると思います。一般へ理解を広めるためには経済的なメリットを打ち出すこともいたしかたないと思います。
〇高知県土佐市 50歳
【質問】
地元で研究をした学芸員がたくさん生まれ、博物館で研究をしてくれるのが望ましいと思うのですが、地元大学で学芸員資格を取れるところは高知大農学部以外にどこかありますか?
【意見】
収集、保存、研究、そして周知と、すべて大切であるのに、一般的には周知(博物館)のイメージが強いと思います。バランスの取れた館ができますよう、そして支える人が集まりますよう、強く応援しています。谷地森先生は素晴らしい旗頭でいらっしゃると思います!
〇高知県高知市 24歳
【意見】
一般周知として、標本をつくる場所を(一般の方が、標本に触れる機会を増やす。変形菌、粘菌の保管場所について、湿度の管理された場所で、日本でも粘菌研究が進んでいる高知に欲しい。
〇高知県南国市 25歳
【質問】
県内の生物系(自然史系)の研究をする大学との協力はないのでしょうか?
県外に標本が流出する問題において、県内の人の利用が難しくなることが挙げられていましたが、県内における標本の学術的な需要はどれほどあるのでしょうか?研究者にとっては、県外に標本を調査しに行くのが恒常となっていると思います。
【意見】
博物館をつくるのであれば、収蔵庫のみに限らず展示スペースも備えた施設が良いと思います。地域の人に活用してもらうためには、展示が重要です。
〇住所・年齢不記載
【質問】
なぜ博物館を通して高知を広めようとお考えになったのですか?
【意見】
法律や規制などの知識が浅はかなので現実的でないかもしれませんが、一人の【意見】としてお願いします。
高知平野内ではありませんが、ドラマなどで話題となった牧野植物園周辺やアンパンマンミュージアム周辺は県外からの観光客や県民がたくさん訪れる場所だと思いました。
オーテピアのように、科学館と図書館を融合させたような、高知の食や自然を広められるような博物館が。
〇愛媛県松山市 23歳
【意見】
収蔵庫(バックヤード)の見学が好き。
島根出身で、中学行事でサヒメルに行くこともあったので、博物館は学習面でもあった方が良いと思います。
〇愛媛県松山市 45歳
収蔵庫(バックヤード)の見学も人気だと思います(科博も愛媛大もそうなので)。
科博を使うこと(県外保存)よりも、試料保存優先が重要だと感じました。
愛媛大学内のミュージアムは、昆虫向けでつくられた例もあるので、高知県内の大学と連携することも、方法としてはあると思います。
展示を見に来る人たちが主な収入源になると思うので、展示面(希少生物の利用)などに力を入れると、一般の人も利用してくれると思いました。
〇愛媛県 23歳
【意見】
常設展示の定期的アップデートなどを行うことによって、高知の歴史のふかぼりなど行えるとより愛着のある施設になるかなと思った。
収蔵庫としての機能はもちろんだが、今回のお話を聞くと、博物館としてのテーマ(目的)として、高知の自然を残すことを第一と感じた。そう考えた際、高知の自然と歴史(自然の変化、人の変化)を合わせた建物として地域密着の建物である方が良いと感じた。
私の地元は福岡の北九州の方なのだが、そちらの自然史博物館では地質、化石、生物と北九州の歴史をかねた博物館となっており、地元の人はもちろん県外の人にもその地域を広める機会となっており、利用者増も見込めるため、同様の人文系の収蔵物と合わせた形になると良いと思う。
〇高知県高知市 75歳
【意見】
目標にしている施設は、収蔵庫なのか博物館(自然史)なのかわからない。
現実的に施設計画を段階的に進めてはどうか。例えば、①用地(2~3ヶ所)、②機能、③建築、④展示・収蔵、⑤イベント、ワークショップ(運営)、⑥予算、⑦人員体制など。
〇高知県 50歳
【意見】
私は北海道札幌市の出身です。
小学校の帰り道に、「郷土記念資料館」のような、開拓民の暮らし、道具達をただ展示している施設がありました。老夫婦が管理人をしていて(無料です)、小学校の帰り道にただ何となく、本当に何となく立ち寄って、意味も分からず見ていました。古い道具の少しカビ臭いにおいも何となく好きで、何回も何回も言った記憶があります。
なので、オーテピアのとなりの空き地が一番、子どもたちがぷらっと立ち寄れると思います。何となく標本たちを見るだけで良いと思います。紹介文などなくても想像力で楽しめるかもしれません。あと私の小4の子が「誰でも自分たちの宝物を展示できるスペースをつくってほしい」と、言ってました。
先生が「高校生にアンケートをとる」と言っていましたが、ぜひ小学生にもアンケートをとってほしいです。案外小学校時代、真剣に地球の事を考えていました。中、高よりも考えていたと思います。
〇高知県高知市 17歳
【質問】
高知には今どのくらい貴重な標本が残っているのかが気になる。また近々保存が困難になる標本は一時的にどこに保存するのかも知りたい。あと、鳥の標本がどんな種類がどれくらいあるのかも知りたい。
【意見】
博物館が高知市内にあれば、学習にも使えるので助かるかもしれない。
〇高知県吾川郡いの町 68歳
【質問】
東敷地の1Fは、水に浸からないのですか?浸かることを前ていとして、ぬれてもさしつかえない展示にするのでしょうか?
【意見】
観光に力を入れている高知県を納得させる意味では「ひろめはく」は有効かと思います。
人が集まりやすい場所は東敷地なんでしょう。オーテピアとの連携もできると思います。しかし、収蔵を第一に考えるなら、高台にある方がいいでしょう。高知県は自然史博物館に対する熱意がなさそうなので、やはり議員や政治が必要になってくるでしょう。
〇高知県高知市 22歳
【質問】
パチ屋を壊して博物館施設をつくることはできますか?はりまやの交差点1・2・3とかフジグランの前。
【意見】
クソ若者の【意見】ですが・・・
やっぱりオシャレな展示・建物が良い!
現在はSNS全盛期であり、それに伴って国内旅行ブームも来ています。
「高知県にはこんなにオシャレで面白い施設がある!」というのを1枚の写真で発信できれば、若者が集まってくるし、経済効果にもつながると思います。「インスタばえ」、「Be Realばえ」というだけで本当にめちゃくちゃ若者くるので…
〇高知県高知市 53歳
【意見】
収蔵庫と博物館を一緒にしたものにするかどうか。場所の問題とも連動してくることで悩ましいですね。つねづね思っているアイデアとしては、高知県民の賛同を多く得られ、世論を味方に付けられる案として、牧野植物園の未利用園地に収蔵庫をつくり、年に1回程度(夏休みなどに)「植物と、生物をテーマに企画展を行う。」というのがストーリーとしても、県民へのアプローチ面からも(議員さんもまき込んで)ベストなのではないかと再度思いました。県民に興味を持ってもらい、つくった後も足を運んでもらう、自然を好きになってもらうことが大切と思いますので。
〇高知県高知市 67歳
【質問】
シロートの【質問】ですが、谷地森さんたちが収集した23万点の標本の中には、日本(世界)レベルに見てもとても貴重な資料や、高知県の自然を語る(証明する)上でとても重要な資料がどれだけあるのか知りたいです。県や市や一般の人にアピールするときにもそれが重要だと思いますので、それをアピールするシートやPRをどんどんすれば人の意識も向上するのでは?
A収集をメインとする場合の、立ち上げのイニシャルコストとランニングコスト、B収蔵+展示+研究の場合の立ち上げのイニシャルコストとランニングコストをざっと見積もっていくらくらいですか?
【意見】
どこに作ればよいかと言えば、五台山(植物園の敷地以外も)が良いのではないかと思いました。津波からの資料保管の面でも、研究、展示の面でも、来場者にとって植物と動物・地理などを一体で体感でき学習もできる。交通の利便性、空き地がいっぱいありそう。
その次はのいち動物園。生きた動物、昆虫と標本を一体に研究、学習できる。津波も大丈夫。
例えば緊急避難で廃校にいくつか分散して保管していき、ときどき企画展などを市街地を借りて展開していき機運を高めていって、自然の大切さをもっとアピールしていってから施設をつくるなどはできないでしょうか。
〇高知県高知市 59歳
【意見】
標本コレクションと研究者(標本管理者含む)がいれば、自然史博物館と言えるので、まずは標本庫と研究者のネットワークを作ると良いと思います。研究者が十分にいないと調査と標本の採集、標本コレクションの構築が難しいので、展示よりもまずは先でしょうか。
〇高知県高知市 15歳
【質問】
私立の学校で、保管場所はないでしょうか?土佐の6Fに空いている準備室みたいなところがあります。
【意見】
土佐高在せきですが、貝類(中山先生)標本コレクションや骨かく標本、植物標本などがあるので、機会があれば、見に来てほしいです。総合科学部とかが見てます。貝に関しては、ラベルの判別や属の変更、数の大まかな把握程度は行っています。
〇高知県室戸市 42歳
【意見】
自然史博物館を高知県内に作ることは賛成します。高知の地形・地質=植生=動物、(大地と生態系)の多様性と成り立ちを伝え、保存する博物館があれば研究のみならず、県民の教育や自然に対するリテラシーの向上に大きく貢献すると思います。「標本収蔵のための自然史博物館」とは少々ビジョンがズレるかもしれませんが、「自然史」の観点を社会に発信できる拠点施設が県内にあることはとても大きな意義があると思います。
〇高知県南国市 18歳
【意見】
私は南国市に住んでいるんですけど、津波という面で見たら、南国はおすすめできないかなと思いましたが、人が集まるという面で見たら意外とありではないかと思いました。
18歳の【意見】ですのであまり参考にはなりませんが、今日これに参加することができてよかったと思うし、普段あまり触れることのない分屋だったので、考えることができてよかったです。
〇高知県土佐清水市 63歳
【質問】
施設を作ることに大きな経費が掛かり、維持管理にも毎年少なからず費用がかかります。税金にしろクラファンにしろお金を出してくれる人が納得できる説明、あるいはメリットについて、どのように確保しますか?
【意見】
大きな器を作ることが望ましいとは思いますが、分野別に既存の施設、廃校を活用するなどして分散収集をすることもありかと思います。維持費は割増しになるかと思いますが、収蔵物を利用しに来る者が、県内のいろんなところに来てもらえる副次効果もあり?
〇高知県吾川郡いの町 72歳
【意見】
“ひろめはく”はたいへん面白いアイディアがそろっていて、進め方によっては食いついてくる議員さんもいるのではないかと思う。高知県の生態系サービスの特徴を知ることができるし、伝統的な食文化に関わる知識を継承する場としても機能するでしょう。一次産業の活性化を一つのテーマとしていちづけを考えると良いと思う。
〇高知県香美市 62歳
【意見】
どこかに集中して置く必要は、どこまであるのでしょうか。集中していると、利用は便利でしょうが、経費は大きくなる気もします。市町村と県レベルの役割分担も重要に思います。市民研究の認知度も上げていく課題もあるようです。
地域性の高い市町村レベルの施設と県レベルの総合的施設との両方を望みます。
〇愛媛県西予市 34歳
【意見】
高知みらい科学館の展示との差別化整理が気になりました。
高知みらい科学館の自然史系の展示はそのまま残す?
保存管理方法で学芸員の人数を分けるのは目からウロコ。
県の方をもう少しまきこみながら、建物の構想を考えるべきは、一理あると思いました。
〇高知県高知市 65歳
【質問】
標本以外に得られたデータを集積することも必要ではないですか?
人材の育成も必要かと思います。
「昆虫や鳥類の出現データとか…」
【意見】
博物館が欲しいで突っ走って、いまの「みらい科学館」になった→収蔵庫の必要性が盛り込まれなかったのでは…
〇高知県高知市 18歳
【意見】
途中、質問されている方もいたが、現状は県内の標本をまとめて収蔵できる施設をつくることが自然史博物館の設立より必要とされていると思う。標本の収蔵庫は確かに必要だが、展示し情報を発信する博物館の役割も重要であると私は考える。一般の方に手軽に情報を知ってもらうためには少なくとも高知市内などアクセスしやすい場所に設置することが望ましいと思った。
〇住所・年齢不記載
【質問】
・越知町の横倉山自然の森博物館が老朽化と聞いたが、増改築で哺乳類も含めた県立施設にできないか?(する計画はないか?)「高知に自然史系ある」と一定、感じられないか?
・収蔵庫が早急に必要というのはその通りだと思う。ただ、県立となるとやっぱり、公共性、将来の人材への投資という側面が重きを置く必要があると思う。“展示活用”という役割に大きく割いた計画とする方が良いのかもしれない。
・県外の大きな自然史博物館は楽しいし大好きで、でもやっぱりなかなか行けない。小さな子どもは特に。高知にできると本当にうれしい。つくりたいです。